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災害事例研究 No.101 【林業】

グラップルによる集材中に、履帯が窪みにはまって横転して、斜面を20m転落

 被災者は傾斜のある農道(幅約2.0mの一般道)において、グラップル(ベースマシン0.2tの油圧ショベル)を使って、道路をふさいでいる伐倒木のクヌギを、谷側へ移す作業をしていた。
グラップルは、突然進行方向の右側の履帯が道路の窪みにはまり、さらにアームを谷側へ旋回させたことから、グラップルが谷側方向の斜面へ横転し、斜面の下方にある林道まで転落した。

災害の発生状況

 被災箇所の作業は、傾斜約40度の斜面のクヌギ林(胸高直径約20cm、樹高15m~20m)の皆伐作業を作業期間2~3日で実施する予定であった。
 午前中に3名の作業班がチェーンソーを使って伐倒を始めた。午後さらに被災者を含めて4名の作業者が加わり伐倒集材作業をしていた。
 被災者は、林道から分岐した農道を登坂しながら、チェーンソーで先行して伐採したクヌギが農道(勾配約25度)をふさいでいたため、農道を通れるようにクヌギを谷側の農道の脇へ移す作業をしていた。
 農道を登坂して進んでいたとき、グラップルの進行方向の右側の履帯が、約40 cm、深さ約10 cmの小さな窪みにはまり、右前方側へ車体が傾き、さらにアームを谷側へ旋回した(推測)ので遠心力が加わり、グラップルが一気に谷側へ横転した。
 谷側は約40度の傾斜があり、伐倒が済んでおり、障害物がない状態にあったので、グラップルは横転してコンクリート舗装の林道(斜距離約20m)まで転落した。その際に、被災者は機体から投げ出され、道路に激突した。
 グラップルはこの林道からさらに谷側へ約50m転落した。

災害の発生原因

  1. 作業期間が2~3日と安易に作業を捉えて、車両系木材伐出機械を使用するための現地調査を行わずに実施したこと。
  2. 車両系木材伐出機械を使用するにもかかわらず、作業計画を立てずに行ったこと。
  3. 被災者は作業現場を十分確認せずに、誘導者もいなかったため、農道の窪みが分からずにグラップルを運転したこと。
  4. 転落のおそれのあるグラップル作業にもかかわらずシートベルトを着用していなかったこと。
    casestudy101

災害の防止対策

  1. 車両系木材伐出機械を使用する作業では、必ず作業開始前に現地調査を実施して危険箇所等を把握し記録するとともに、対応策を措置しておくこと。
    本件の災害では、①農道の勾配は当協会の災防規程で規定している「作業道制限勾配14 度」を大幅に超えていること、②農道の幅員も災防規程の「接地幅の1 . 2倍以上」を満たしていないこと、③農道の右側に窪地があり、グラップルが横転するおそれがあること等を現地調査で把握し、必要な措置等を記録すること。
  2. 車両系木材伐出機械を使用する場合には、地形や使用機械の能力を考慮した作業計画を立てること。
    本件の災害では、前記1の調査結果、措置状況、対応策を踏まえた作業計画、安全な作業手順等を定めるべきであった。
    具体的には、窪地の補修、農道の勾配を緩やかにするとともに、幅員も確保した道を作設する。または、簡易架線集材等による架線集材にする等を検討し、安全な方法を選択すべきであったこと。
  3. 路肩からの転落の危険のある作業では、必ず誘導員を配置して作業を行うこと。
  4. 転落のおそれのあるグラップル作業にもかかわらずシートベルトの着用が徹底されていなかったこと。

車両系木材伐出機械の安全対策

 平成26年に労働安全衛生法の改正により、車両系木材伐出機械の作業は法規制が行われました。
 しかしながら、この機械を使った作業では、法律を遵守しないままに行われている実態が見受けられます。
 特に災害箇所の現地調査で気づいたことは、①事前の現地を調査して記録すること(安衛則第151条の88)、②作業計画を作成すること(安衛則第151条の89)、③転落等のおそれがある場合には誘導員を配置すること(安衛則第151条の92 第2項、第3項)、④シートベルトの着用を徹底させること(安衛則第151条の93)、⑤農道が制限勾配(災防規程第115条第3号)以上あることや幅員を確保(災防規程第80条)することに問題があることです。
 今回の災害はこのような法令等の認識不足があったものと考えられます。