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災害事例研究 No.151 【林業】

伐倒した「つる絡みのヤマザクラ」が顔面に激突

支障木の伐倒処理作業で、山側の立木とつる絡みとなっていたヤマザクラをかん木のある谷側に伐倒した際、跳ねて被災者の顔面に激突した。

災害の発生状況

 ため池の用水路新設工事現場において、農道を往来する工事車両の妨げになる山林斜面の雑木の伐採作業中に発生した。
 被災者はチェーンソーを使用して伐倒し、ウインチ付き木材グラップル機で集材、同僚Aは伐倒木の荷掛けなどの作業に従事していた。
 被災者は、雑木(ヤマザクラ:胸高直径16cm、樹高17.7m)の受け口を谷側に向けて切り、追い口を切って伐倒したところ、山側の立木とつる絡みとなっていたヤマザクラをかん木のある谷側に倒したところ、跳ねて山側にいた被災者の顔面に激突した。
 被災者はドクターヘリで病院に搬送されたが、当日死亡した。
 被災者は、保護帽、チャップスを着用、チェーンソー特別教育を修了していた。
 チェーンソーによる伐木等作業の作業計画を作成していなかった。

災害発生の原因

  1. 伐倒木のつる絡みの状況確認をしなかったこと。
  2. つる絡みのヤマザクラを伐倒する際に、絡んでいる「つる」や伐倒木が激突するおそれのある「かん木」を取り除かなかったこと。
  3. 伐倒の際の退避が遅れたことと、予め退避場所を選定していなかったこと。
  4. 作業計画を作成していなかったこと。

災害の防止対策

  1. 事業者は、チェーンソーを用いて伐木の作業を行う場合には、伐木等作業を行う範囲を対象に、つる絡み・枝絡みの状況、下層植生の状況(かん木・草本の粗密を含む。)など事前調査を行い、その結果を調査野帳に記録すること。
  2. その調査結果によりリスクアセスメントを行い、①伐倒の方法、②伐倒作業の順序、③かかり木処理の作業方法、④つるやかん木の除去等、⑤伐倒作業における退避場所の設定標示等を定めた作業計画を定めること。
  3. 上記2により定めた作業計画について、事業者は労働者に確実に周知を行い、作業者は作業計画に基づき伐木等作業を行うこと。

〈労働安全衛生規則〉

(伐木作業における危険の防止)
第477条 事業者は、伐木の作業(伐木等機械による作業を除く。以下同じ。)を行うときは、立木を伐倒しようとする労働者に、それぞれの立木について、次の事項を行わせなければならない。
 一  伐倒の際に退避する場所を、あらかじめ、選定すること。
 二  かん木、枝条、つる、浮石等で、伐倒の際その他作業中に危険を生ずるおそれのあるものを取り除くこと。
 三  略
2  立木を伐倒しようとする労働者は、前項各号に掲げる事項を行わなければならない。

〈通達〉「 チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」(基発1207第3号平成27年12月7日、改正基発0131第1号令和2年1月31日)を抜粋

○事業者及び労働者の責務
 ア  伐木等作業を行う事業者は、労働安全衛生法令に基づく措置を的確に履行することはもとより、本ガイドラインに基づく措置を講ずることにより、伐木等作業の安全対策を徹底すること。
 イ  伐木等作業を行う労働者は、労働安全衛生法令により労働者に義務付けられている措置を的確に履行することはもとより、事業者が行う本ガイドラインに基づく措置を遵守することにより、伐木等作業の安全対策を徹底すること。
〇作業計画等
(1)調査及び記録
 事業者は、伐木等作業を行う場合、伐木等作業を行う範囲を対象に、チェーンソーを用いて伐木の作業を行う場合には表1に示す事項を含め調査し、その結果を記録すること。
表1  チェーンソーを用いて伐木の作業を行うための調査に含める事項

①~③ 略
④ 伐倒対象の立木の状況(伐倒の対象となる立木の樹種・樹齢、胸高直径・樹高の状況、立木の大きさのばらつき及び立木の密度を含む。)
⑤ つるがらみ・枝がらみの状況
⑥ 枯損木・風倒木の状況
⑦ 下層植生の状況(かん木・草本の粗密を含む。)
⑧ . ⑨ 略

(2)リスクアセスメント及びその結果に基づく措置の実施等
伐木等作業については、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)「以下「法」という。」第28条の2第1項に基づき、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成18年3月10日危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第1号)を踏まえ、リスクアセスメントを行い、その結果に基づいて、労働安全衛生法令に規定された措置を実施するほか、労働者の危険又は健康障害を防止するために必要な措置を講ずるよう努めること。
(3)作業計画
  ア 事業者は、伐木等作業を行う場合には、あらかじめ、上記(1)を踏まえ、チェーンソーを用いて伐木の作業を行う場合には表3に示す事項を含む作業計画を定めること。
  イ 事業者は、上記アにより定めた作業計画に基づき伐木等作業を行うこと。
  ウ 上記アにより定めた作業計画について、事業者は労働者に確実に周知を行うこと。なお、例えば、伐木等作業を開始する前に、朝礼等の安全衛生に関する打合せを活用し、作業計画の説明を行う等の方法があること。

表3  チェーンソーを用いて伐木の作業を行うために定める作業計画に含める事項

1 作業地の概況 ①~⑥
2 作業の方法等 ① 作業の方法(チェーンソー・車両系木材伐出機械の使用の有無を含む。)
② 伐倒の方法
③ 伐倒の順序
④ 略
3 作業の安全対策 ① 伐倒作業における退避場所の設定標示
②~⑤ 略示