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災害事例研究 No.109 【林業】

かかり木を外そうとして、かかられた立木を伐倒作業中に、かかり木が外れ被災者に激突

 作業道予定路線の先行伐倒及び作設作業をザウルスロボで実施していたところ、ザウルスロボが故障したため急きょチェーンソーによる伐倒作業に切りかえて実施していた。かかり木が発生したので、かかり木を外そうとしてかかられた木の伐倒作業を行っていたところ、かかり木が外れて落下し、被災者に激突した。

災害の発生状況

  1. 災害発生現場は、6名の作業者により、カラマツの列状間伐作業を実施していた。
     基本的な作業手順としては、作業道の作設についてザウルスロボで支障木の伐倒、掘削等を行い、チェーンソー作業者が間伐作業、その他プロセッサ、グラップル、フォワーダ等にて造材、集材を行うこととしていた。
  2. 被災当日は、ザウルスロボの油圧系統にトラブルが発生し、修理を要することとなったことから、急きょ作業道予定路線の支障木の伐倒作業を2名でチェーンソーにより実施していた。
     2名は山の斜面を上下に80m程離れ、作業道の支障木伐倒をそれぞれ実施していた。
     午前10時には、2名が合流して休憩をとり、再び作業を進め、午前12時前に、昼食のために再度合流することとしていたので、作業者Aは斜面上方から声をかけつつ被災者の作業箇所に近づいたが、チェーンソーのエンジン音はするものの、被災者からの応答がなかった。
     近づくと、被災者が、カラマツ(伐根直径35 cm、樹高24m)の下敷きになっているのを発見した。
  3. 現場の状況から、被災者が伐倒しようとしていたカラマツ立木には受け口が切られ、アイドリング状態のチェーンソーが追い口に挟まったままとなっていたことから、追い口を切断中であったと推察された。
     また、被災者に飛来したカラマツは、伐根の受け口の方向がかかられたカラマツ立木の方向に向けられていたため、かかり木になったものと推察された。
     以上のことから、カラマツを伐倒したところ、別のカラマツにかかり木となったため、かかられたカラマツを伐倒して双方を倒そうとしたが、追い口を切り進めている作業中に、かかり木となったカラマツが落下して被災者に激突したものと推察された。
    casestudy109

災害発生の原因

  1. かかり木処理の禁止行為としている「かかられた木の伐倒」を行ったこと。
  2. 伐倒後に作業道から車両系木材伐出機械で集材しやすい方向に向けて伐倒していたことから、かかり木が発生しやすい伐倒作業であったにもかかわらず、ザウルスロボが故障し、チェーンソーによる伐倒作業に切りかえたときに、かかり木が発生した場合の事前の対策(作業方法、作業手順等)が不十分であったこと。
  3. 応援を依頼して2人以上でかかり木処理をすることも可能であったのに、それをしなかったこと。

災害防止対策

  1. かかり木の処理作業で禁止されている「かかられている木の伐倒」は行わないこと。
  2. かかり木が発生しやすい伐倒作業現場で、車両系木材伐出機械によりかかり木処理ができない場合は、正しいかかり木処理の作業方法や作業手順について事前に指導を行い、必要な道具等についても準備すること。
    • 作業方法:できるだけ2人以上でかかり木処理作業を行うこと
    • 準備する道具等:胸高直径20 cm 未満(フェリングレバー、ターニングストラップ、ロープ等)、胸高直径20cm以上(けん引具)、一時的に放置する場合の立入禁止用テープ
  3. チェーンソー作業従事者については、ベテラン作業者であっても、危険又は有害な業務に現に就いている者に対する安全衛生教育に関する指針等による安全衛生教育を5年ごとに実施すること。

<参考>

林業・木材製造業労働災害防止規程

(チェーンソーを用いて行う伐木等の業務従事者に対する安全衛生教育)

第22条 会員は、チェーンソー作業に従事する作業者に対しては、「危険又は有害な業務に現に就いている者に対する安全衛生教育に関する指針」で定めるチェーンソーを用いて行う伐木等の業務従事者安全衛生教育を5年ごとの実施に努めなければならない。
(かかり木の処理)〔一部抜すい〕
第54条 会員は、かかり木が生じた場合には、作業者に当該かかり木を速やかに処理させるとともに、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
(2) 作業は、できるだけ2人以上の組となるように調整すること。
(3) 機械器具等は、次のアからウまでに掲げる場合に応じて使用し、安全な作業方法により処理すること。
 ア 当該かかり木の胸高直径が20センチメートル未満であって、かつ、当該かかり木が容易に外れることが予想される場合は、木回し、フェリングレバー、ターニングストラップ、ロープ等を使用して、かかり木を外すこと。
 イ 当該かかり木の胸高直径が20センチメートル以上である場合又はかかり木が容易に外れないことが予想される場合は、けん引具等を使用し、当該かかり木を外すこと。
2 作業者はかかり木の処理について、次のアからオまでに掲げる事項を行ってはならない。
 ア かかられている木を伐倒することにより、かかり木全体を倒すこと。