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災害事例研究 No.115 【林業】

トラクター・ショベルで除雪中、バケットの先端が排水溝に引っ掛かり、その衝撃で腹部がハンドルに激突

 製材置場の構内をトラクター・ショベルで除雪中、バケット先端部が排水溝(幅約49センチメートル、金属製の格子状の蓋でおおわれている)の縁に引っ掛かり、被災者はその衝撃で腹部が運転席のハンドルに激突し、内出血により死亡したもの。

災害の発生状況

 被災者が除雪していた製材置場は、事務所及び倉庫に囲まれた場所で、広さは横方向に83.5メートル、縦方向に69メートルであった。
 製材置場の地面は、災害発生5か月前に、アスファルトに舗装され、その際に排水溝(幅49cm、深さ30センチメートル、長さ69メートル)が製材置場の中央部に設置された。
 排水溝は、金属製の蓋を備え付けるために鋼製の受枠が設けられ、その受枠の上部は地面と平らになっていた。
 除雪作業は、被災者一人で作業を行っており、除雪作業に係る作業手順及び作業方法は、定められておらず、作業手順等は被災者に任されていた。
 また、構内でトラクター・ショベルを使用して作業を行う場合の制限速度は定められておらず、速度標識等も設置されていなかった。

災害の状況

  1. 午前8時から、被災者はトラクター・ショベル(アタッチメントはフォーク)を運転して製材工場の横の原木置場から原木を製材工場へ運搬した。
  2. 被災者はアタッチメントをバケットに交換し、トラクター・ショベルを使用して、一人で構内の除雪作業を開始した。
  3. 除雪作業開始時の積雪は約15センチメートルであった。
  4. 1回目に、図1の左上のコンテナと木材の間を左端から右方向へ幅約2.5メートル、長さ約90メートルの範囲の除雪が行われ、被災者は右端の地点でバケットに集まった雪を降ろし、後退して左端まで戻った。
  5. 午前9時15分頃、被災者は1回目に除雪を行った場所の約50センチメートル倉庫側を同じ方向に2回目の除雪を開始したが、右方向へ約30メートル進んだところで、トラクター・ショベルのバケットの先端の歯が排水溝の受枠に引っかかった。目撃証言によると、後輪が約130センチメートル浮き上がった。
    その衝撃で、被災者は腹部をハンドル部分に強打した。
    被災者は、シートベルトを着用していなかった。
    被災者は、救急隊により病院へ搬送されたが、同日午前11時47分に死亡が確認された。
  6. 被災者が除雪作業に使用していたトラクター・ショベルについて
    機体重量:5,750キログラム
    駆動車輪数:四輪駆動
    最高速度:時速34キロメーター。
    最大積載量:2,500キログラム
    製造年:災害発生の7年前
    特定自主検査:災害発生10か月前に実施。
    修理を要した箇所なし。
  7. 被災者の資格等について被災者は、災害発生の8年前に車両系建設機械(整地・運搬積込み用及び掘削用)運転技能講習を修了した。トラクター・ショベルの運転経験年数は8年であった。
    casestudy115

災害の発生原因

  1. 除雪作業中のトラクター・ショベルのバケットの先端の歯が排水溝の受枠に引っかかったこと。
  2. トラクター・ショベルを使用して行う除雪作業に関し、予め作業計画を定めていなかったこと。
  3. トラクター・ショベルの作業に応じた、トラクター・ショベルの制限速度を定めていなかったこと。
  4. 被災者にシートベルトを着用させていなかったこと。
  5. 関係労働者に対し、安全教育が徹底されていなかったこと。

災害の防止対策

  1. トラクター・ショベルを用いて除雪作業を行う際、バケットの先端を少し上向きにして、アームを下げきった位置から、バケットをゆっくりあげて水平位置を保ちながら除雪をすること。
  2. 排水溝のようにバケットの歯が引っ掛かりやすい構造物が敷設されている場合は、排水溝を横断しながら除雪するのではなく、できるだけ排水溝と平行方向に除雪すること。
  3. 除雪時は上記①及び②について、運行経路及び作業方法を定めた作業計画やマニュアルに記載して、関係労働者に周知徹底させること。
  4. トラクター・ショベルを用いて作業を行う際に、当該作業に応じた適正な制限速度を定めること(製造元への照会・回答によると、災害発生時は、21.5キロメートル毎時から15.2キロメートル毎時の速度と推測)。
  5. トラクター・ショベルの運転者に対し、シートベルトの着用を徹底させること。
  6. 関係労働者に対し、安全衛生教育を徹底すること。