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災害事例研究 No.116 【林業】

フォワーダが作業道から転落し、運転者がフォワーダの下敷きになって死亡

 フォワーダにより材を運搬中、カーブをスイッチバックにより方向転換してバック走行中作業道から転落。運転者はシートベルトをしていなかったためキャビンから放り出され、フォワーダの下敷きになって死亡した。

災害の発生状況

 当該現場においては、4名の作業員で間伐・集材作業を実施していた。
 当日の作業は、先山において作業道作設のための支障木の伐倒、枝払い及びバックホウでの作業道作設であった。
 フォワーダでの集材作業は基本的には土場周辺で行うこととなっていたものの、被災者は、先山が土場からかなり遠いことから、作業開始に当たり、フォワーダの荷台に他の作業員を乗せて先山まで送った後、先山から戻る途中に伐倒して造材された原木を集めつつフォワーダに積載し、土場を目指して運転していた。
 途中、カーブのある地点でスイッチバックにより方向転換し、勾配12度、幅員4mの作業道をバック走行で46m程進み、次のカーブに差し掛かったところで作業道から転落した。
 フォワーダは6m程斜面を転落し、機体を横にして停止したが、被災者は運転席から放り出されてフォワーダの下敷きになった。
 午後2時30分、約束の時刻になってもフォワーダが迎えにこないことから、先山から下山してきた同僚たちが、午後3時頃、フォワーダの下敷きとなって死亡している被災者を発見した。
 なお、現場は携帯電話の圏外となっており、また、トランシーバーも所持していなかった。
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災害の発生原因

  1. 災害発生箇所の作業道は、旋回可能なカーブであるにもかかわらず、原木を積載して後方が見えづらい状況の中、スイッチバックをしたこと。
  2. 作業道は、制限勾配(林業・木材製造業労働災害防止規程では、14度)に近い12度の勾配で46m作設されていたにもかかわらず、勾配緩和区間を設けていなかったこと。
  3. 運転者がシートベルトをしていなかったため、転落時にキャビンから放り出され、下敷きになったこと。
  4. トランシーバー等緊急を知らせる通信手段が確保されていなかったこと。

災害の防止対策

  1. 作業道を作設する場合、できるだけスイッチバックを設けないようにすること。
  2. 制限勾配に近い勾配で作業道を作設する場合は、30m以上の区間を設けないこと。
     また、制限勾配に近い勾配の前後には勾配を緩和させる区間を設けること。
  3. 運転時には、万一の際に運転者がキャビンから放り出されないように、シートベルトを確実に装着すること。
  4. 災害発生時に関係者への連絡等が速やかにできるように、携帯電話の通信可能エリアの明確化、トランシーバーの配備等、連絡が取れる手段について現場ごとに検討すること。
     また、労働災害が発生した場合の応急の措置及び傷病者の搬送の方法も明確にし、現場作業者に周知すること。
  5. フォワーダの荷台に運転者以外の者を搭乗させないこと。
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〈参 考〉
事業場では、災害発生後、次の職場改善を行った。
プロセッサとバックホウには機体取り付け型のトランシーバーを、フォワーダとグラップルとチェーンソーマンにはハンディタイプのトランシーバーを持たせるように5台購入した。安全面の向上とともに、作業性の向上にも役立っている。
さらに、作業道を適切に維持しつつ、先山への移動にはジープ型乗用車を使用している。

林業・木材製造業労働災害防止規程〈抜粋〉

(くさびの使用)
(誘導者の配置)
第82条 会員は、路肩等で車両系木材伐出機械を用いて作業を行う場合において、車両系木材伐出機械の転倒又は転落により運転者に危険が生ずるおそれがあるときは、誘導者を配置して車両の誘導を行わせなければならない。
(走行路の確保)
第115条 会員は、走行集材機械の走行路について、作業者に次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
(1) 30メートル以上の区間にわたる制限勾配(走行できる最大の勾配をいう。以下同じ。)に近い勾配の走行路は設けないこと。
(2) 制限勾配に近い勾配の前後には勾配を緩和させた区間を設けること。
(3) 略
(転倒時保護)
第81条 会員は、傾斜地等であって、車両系木材伐出機械の転倒又は転落により運転者に危険が生ずるおそれのある場所においては、転倒時保護構造を有し、かつシートベルトを有するものを使用するように努めるとともに、作業者にシートベルトを使用させるように努めなければならない。
(緊急連絡の方法等の決定、周知)
第23条 会員は、あらかじめ、緊急時(労働災害の発生時、作業者の所在不明時等をいう。)に対処するため必要な次の事項について定めるとともに、その内容を山土場等連絡の際の拠点となる場所に掲示するなどにより作業者に周知させなければならない。
(1) 作業場所における作業中の作業者相互の連絡方法
(2) 緊急時における作業場所と山土場等連絡の際の拠点となる場所との連絡方法
(3) 労働災害発生時における山土場等から事業場の事務所、消防機関等救急機関等への連絡方法
(4) 労働災害発生時における被災作業者の災害発生場所から山土場等へ、山土場等から医療機関までの移送の方法
(5) 略
(連絡責任者の選任と連絡方法等の確認)
第24条 会員は、作業現場ごとに、連絡責任者を選任し、その氏名を関係作業者に周知させなければならない。
2  会員は、連絡責任者に、作業現場において次の事項を行わせなければならない。
(1) 事業場の事務所との連絡に携帯電話等の無線機器を使用する場合は、あらかじめ、作業現場から事業場の事務所への通信が可能である位置を確認しておくこと。
(2) 作業者に対し、作業中の作業者相互の連絡方法として定めた方法による連絡で、相互の連絡が取れることを確認させること。
(3) 略
(搭乗の制限)
第114条 会員は、走行集材機械の走行時に乗車席以外の箇所(荷台を含む)に他の作業者を搭乗させてはならない。