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災害事例研究 No.161 【林業】

かかられた木を伐倒していたところ、かかり木が外れ被災者に激突

トドマツの伐倒作業を行っていたところ、伐倒後にかかり木となり、かかられていた別のトドマツを伐倒していたところ、かかり木が落下し、当該かかり木に激突された。

災害の発生状況

 被災者は、天然林の択伐として、トドマツA(伐根直径26cm、樹高18m)の伐倒作業を行っていたところ、追い口を切りすぎたためつるがなく、伐倒方向がずれて、別のトドマツB(伐根直径42cm、樹高20m)にかかり木となった。
 そこで、被災者はかかられたトドマツBを先に処理しようと、トドマツBの受け口を切り、続けて追い口を切っているときに、かかり木Aが落下し直撃された。被災位置は、トドマツAの根元から約13m離れた地点であった。
 かかり木Aの伐倒時には、くさびを使用した形跡はなかった。
 現場には、ウインチ付きの木材グラップル機があったが、かかり木処理には使用されていなかった。

災害の発生原因

  1. かかり木はいつ外れて落下するか分からないのに、かかり木の下に入ってかかられている木を伐倒したこと。
  2. かかり木を木材グラップル機のウインチにより処理しなかったこと。
  3. トドマツの伐倒順序を、トドマツAより斜面の下方に位置していたトドマツBから先に伐倒しなかったこと。
  4. トドマツAがかかり木となった原因は、追い口を切りすぎたため、つるが機能していなかったことから、伐倒方向がずれたこと。また、つるが残っていなかったことからクサビを使用できなかったこと。

災害の防止対策

  1. かかり木はいつ外れて落下するか分からないので、かかり木の下に入ってかかられている木を伐倒しないこと。
  2. フェリングレバー等を使用してかかり木が容易に外せない場合は、近くの木材グラップル機のウインチを使用してかかり木処理を行うこと。
  3. 安全に伐倒作業を実施するために、かかり木が発生しないような伐倒木の伐倒順序を事前に検討すること。
  4. 伐倒方向を確実にしてかかり木が発生をしないように追い口の切り込みの深さは、つるの幅は伐根直径の10分の1程度残し、切り込みすぎないこと。また、伐倒作業を安全に確実にするため、つるを残してクサビを使用すること。

〈 労働安全衛生規則 〉
(かかり木の処理の作業における危険の防止)
第478条 
2 事業者は、労働者にかかり木の処理を行わせる場合は、かかり木が激突することによる危険を防止するため、かかり木にかかられている立木を伐倒させ、又はかかり木に激突させるためにかかり木以外の立木を伐倒させてはならない。
(伐木作業における危険の防止)
第477条 事業者は、伐木の作業(伐木等機械による作業を除く。以下同じ。)を行うときは、立木を伐倒しようとする労働者に、それぞれの立木について、次の事項を行わせなければならない。
一~二 略
三 伐倒しようとする立木の胸高直径が20センチメートル以上であるときは、伐根直径の4分の1以上の深さの受口を作り、かつ、適当な深さの追い口を作ること。この場合において、技術的に困難である場合を除き、受け口と追い口の間には、適切な切り残しを確保すること。
2 立木を伐倒しようとする労働者は、前項各号に掲げる事項を行わなければならない。

〈チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン(以下「伐木ガイドライン」という。)改正令和2年1月31日付け基発0131第1号7-(3)〉
ア 概要(図2参照)
伐倒作業において、正しい受け口切り及び追い口切りによって、受け口と追い口の間には適当な幅の切り残し(以下「つる」という。)を正しく残すこと。
なお、安衛則第477条第1項第3号に基づき、伐倒しようとする立木の胸高直径が20センチメートル以上であるときは、伐根直径の4分の1以上の深さの受け口を作り、かつ、適当な深さの追い口を作ること。この場合において、技術的に困難である場合を除き、伐根直径の10分の1程度となるように、つるを確保すること。
伐木に従事する労働者の知識、経験等を踏まえ、胸高直径20センチメートル未満の立木であっても、適切に受け口、追い口及び切り残しを作ることができる場合は、受け口を作ることが望ましいこと。
また、2個以上の同一形状のくさびを使用して行うことを原則とすること。
なお、立木の重心の移動等を踏まえ、くさびを使用すること。

〈伐木ガイドライン別添2「かかり木の処理の作業における安全の確保に関する事項」2-(2)〉
ウ 適切な機械器具等の使用
車両系木材伐出機械、機械集材装置及び簡易架線集材装置(以下「車両系木材伐出機械等」という。)の使用の可否の別、かかっている木の径級、かかり木の状況により、次により機械器具等を使用すること。
(ア) 車両系木材伐出機械等を使用できる場合
車両系木材伐出機械等を使用できる場合においては、車両系木材伐出機械等を使用して、かかり木をはずすようにすること。
また、車両系木材伐出機械等を使用する場合には、ガイドブロックを用い、安全な方向に引き倒すようにするとともに、急なウインチの操作、走行、ワイヤロープの巻取り等を行わないようにすること。


以下略