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災害事例研究 No.125 【林業】

かかり木の処理中に死亡

 かかり木の処理で、かかられているヒノキを伐倒中、かかっていたスギの木が落下し、その下敷きとなり死亡したもの。

災害の発生状況

  1. 被災者は班長として部下の2人と共に搬出間伐現場に入り、伐倒作業に従事した。
    場所は平坦な地で、近くにある作業道上には単動ウインチ付きのグラップルを配置していた。
  2. 被災者は最初にスギ①(樹高約18m、伐根直径43cmの欠頂木)を伐倒したところ、ヒノキ②(樹高約20m、伐根直径33cm)にかかってしまった。
  3. その後被災者は、スギ①から横方向に約5m離れた所に移動し、ヒノキ③(樹高約20m、伐根直径31cm)をスギ①の上に浴びせ倒したが、スギ①は落ちずに、伐倒したヒノキ③もヒノキ②にかかってしまった。
  4. 被災者は、ヒノキ③の元玉切りを2回行い外そうとしたが落ちなかった。結局、スギ①とヒノキ③が、ヒノキ②にかかったままとなった。
  5. 次に被災者は、かかられているヒノキ②に移動して伐倒中、上からかかり木のスギ①が落下して被災者の背中に激突し死亡した。
    casestudy125

災害発生の原因

  1. かかり木の処理において、禁止されている作業 (浴びせ倒し、元玉切り、かかられている木の伐倒) を行ったこと。
  2. 伐倒に際して適当なつるを残す等の基本作業を守っていなかったことから、スギ①の伐倒方向が若干ずれて、ヒノキ②にかかってしまったこと。

災害の防止対策

  1. かかり木の処理においては、浴びせ倒し、元玉切り及びかかられている木の伐倒を行わないこと。
  2. 胸高直径が20cm以上の立木を伐倒するに時には、伐根直径の4分の1以上の深さの受け口を作り、かつ適当な深さの追い口を作ること。さらに、適当な幅のつるを残すようにすること。
  3. かかり木の胸高直径が20cm以上である場合又はかかり木が容易に外れないことが予想される場合は、けん引具等を使用し、当該かかり木を外すこと。
    また、かかり木の処理をグラップル等のウインチを利用して行う場合は、ガイドブロツクを用いて運転者以外の方向にかかり木を安全に引き倒すことにより安全に処理をすること。
  4. かかり木の処理はできるだけ2人以上で行うこと。
  5. 関係法令及び「林業・木材製造業労働災害防止規程」を遵守すること。

◆関係法令参照条文◆

「労働安全衛生法」第21条、第28条の2
「労働安全衛生規則」第24条の11、第477条、第478条

◆林業・木材製造業労働災害防止規程参照条文◆

(かかり木の処理)
第54条 会員は、かかり木が生じた場合には、作業者に当該かかり木を速やかに処理させるとともに、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
(1) 当該かかり木の処理の作業について安全な作業をさせるため次のアからオまでの事項を行わせること。
ア 当該かかり木の径級、状況、作業場所及び周囲の地形等の状況を確認すること。
イ 当該かかり木が生じた後速やかに、当該かかり木により危険を生ずるおそれのある場所から安全に退避できる退避場所を選定すること。
ウ 当該かかり木の処理の作業の開始前又は開始後において、当該かかり木がはずれ始め、作業者に危険が生ずるおそれがある場合、イで選定した退避場所に作業者を退避させること。
エ かかり木が生じた後、やむを得ず当該かかり木を一時的に放置する場合を除き、当該かかり木の処理の作業を終えるまでの間、当該かかり木の状況について常に注意を払うこと。
オ 略
(2)作業は、できるだけ2人以上の組となるように調整すること。
(3)機械器具等は、次のアからウまでに掲げる場合に応じて使用し、安全な作業方法により処理すること。
ア 略
イ 当該かかり木の胸高直径が20センチメートル以上である場合又はかかり木が容易に外れないことが予想される場合は、けん引具等を使用し、当該かかり木を外すこと。
ウ 車両系木材伐出機械(伐木等機械、走行集材機械及び架線集材機械(機械集材装置又は簡易架線集材装置の集材機として用いている場合を除く。)をいう。以下同じ。)、機械集材装置、簡易架線集材装置等を使用できる場合には、原則として、これらを使用して、当該かかり木を外すこと。
2  作業者はかかり木の処理について、次のアからオまでに掲げる事項を行ってはならない。
ア  かかられている木を伐倒することにより、かかり木全体を倒すこと。
イ  他の立木を伐倒し、かかり木に激突させることにより、かかり木を外すこと。
ウ  かかり木を元玉切りし、地面等に落下させることにより、かかり木を外すこと。
エ~オ 略
(受け口及び追い口)
第61条 会員は、チェーンソーによる伐木の作業を行う場合には、作業者に、それぞれの立木について、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
(1) 受け口の深さは、伐根直径(根張りの部分を除いて算出するものとする。)の4の1以上とすること。ただし、胸高直径が70センチメートル以上であるときは、3分の1以上とすること。
(2)~(3) 略
(4) 追い口切りの切り込みの深さは、つるの幅が伐根直径の10分の1程度残るようにし、切り込み過ぎないこと。