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災害事例研究 No.129 【林業】

かかり木処理において元玉切りして同僚に激突

 合図・指差し呼称を実施せずに、かかり木処理を元玉切りしたことにより、近くで枝払い作業をしていた同僚に激突した。

災害の発生状況

 カラマツ林の間伐作業を行うにあたり、当日は、午前9時からミーティングを実施し、7名の作業員を2班に分け、3名は伐倒班、4名は造材班と作業を区分し、伐倒班と造材班は十分離れて作業を行うこととした。
 3名の伐倒班は同一斜面を横に5m程離れ、斜面下方に4~5本伐倒したが、その後1本(樹高約25m、胸高直径約30cm)がかかり木となった。
 伐倒者は、造材班が離れた場所にいると思い込んでいたことから、当該かかり木を元玉切りにて外したが、かかり木が倒れた先に、樹木の陰で枝払い作業中の造材班の被災者がおり、激突されて死亡した。
casestudy129

災害発生の原因

  1. 伐倒作業における近接作業になっていたこと。
  2. 伐倒作業において、合図、指差し呼称等の安全確認を怠り、樹高の2倍の範囲内の近接作業を回避するための措置をしていないこと。
  3. かかり木の処理を元玉切りという禁止事項により実施したこと。

災害の防止対策

  1. 立木の伐倒を行う場合は、他の作業者を立木の2倍以上離れさせること。また、近接して伐倒作業を行う場合は、それぞれの立木の2.5倍以上離れさせること。
  2. 立木の伐倒にあたっては、予備合図を適切に行い、他の作業者が退避したことを応答合図で確認し、本合図及び指差し呼称を行って、立入禁止区域より他の作業者が退避していることを確認してから伐倒を行うこと。
  3. かかり木の処理については、
    • かかり木が激突する等の危険がある場所にかかり木の処理者以外を立入らせないこと
    • 作業は極力2名以上で行うこと
    • かかり木の胸高直径、かかり木の状態を確認し、適切な処理道具を使用して取り外すこと
    • 浴びせ倒し、かかられた木を切る、元玉切り等の禁止行為は行わないこと

〈労働安全衛生規則〉

(かかり木の処理の作業における危険の防止)
第478条 事業者は、伐木の作業を行う場合において、既にかかり木が生じている場合又はかかり木が生じた場合は、速やかに当該かかり木を処理しなければならない。ただし、速やかに処理することが困難なときは、速やかに当該かかり木が激突することにより労働者に危険が生ずる箇所において、当該処理の作業に従事する労働者以外の労働者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を縄張、標識の設置等の措置によって明示した後、遅滞なく、処理することをもつ足りる。
(伐倒の合図)
第479条 事業者は、伐木の作業を行なうときは、伐倒について一定の合図を定め、当該作業に関係がある労働者に周知させなければならない。
2 事業者は、伐木の作業を行う場合において、当該立木の伐倒の作業に従事する労働者以外の労働者(以下この条及び第481条第2項において「他の労働者」という。)に、伐倒により危険を生ずるおそれのあるときは、当該立木の伐倒の作業に従事する労働者に、あらかじめ、前項の合図を行わせ、他の労働者が避難したことを確認させた後でなければ、伐倒させてはならない。
3 前項の伐倒の作業に従事する労働者は、同項の危険を生ずるおそれのあるときは、あらかじめ、合図を行ない、他の労働者が避難したことを確認した後でなければ、伐倒してはならない。
(立入禁止)
第481条 事業者は、造林、伐木、かかり木の処理、造材又は木寄せの作業(車両系木材伐出機械による作業を除く。以下この章において「造林等の作業」という。)を行っている場所の下方で、伐倒木、玉切材、枯損木等の木材が転落し、又は滑ることによる危険を生ずるおそれのあるところには、労働者を立ち入らせてはならない。
2  事業者は、伐木の作業を行う場合は、伐倒木等が激突することによる危険を防止するため、伐倒しようとする立木を中心として当該立木の高さの2倍に相当する距離を半径とする円形の内側には、他の労働者を立ち入らせてはならない。
3  事業者は、かかり木の処理の作業を行う場合は、かかり木が激突することにより労働者に危険が生ずるおそれのあるところには、当該かかり木の処理の作業に従事する労働者以外の労働者を立ち入らせてはならない。

〈通達〉

令和2年1月31日に通達された別添1「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」7-(2)-ウ
安衛則第481条第2項に基づき、伐木作業を行うときには、伐倒しようとする立木を中心として、当該立木の高さの2倍に相当する距離を半径とする円形の内側に伐倒者以外の労働者が立ち入ることを禁止すること。また、隣接して伐倒作業を行う場合においても、伐倒しようとする立木それぞれの高さの2.5倍に相当する距離を半径とする円の内側に伐倒者以外の労働者を立ち入らせないこと。

同通達別添2「かかり木の処理の作業における安全の確保に関する事項」2-(2)-エ
「下記(ウ)から(オ)までについても、かかり木の処理の作業における禁止事項として、元玉切りについて「かかり木の処理の作業を安全に行うものであるとは言い難いことから、実施しないよう確実に指導すること。さらに、事業者は、伐木等作業に従事する経験年数が短い労働者に対して、かかり木の処理の作業における禁止事項の遵守を徹底するように確実に指導すること。」と禁止事項としてガイドラインに明記された。
(ウ)かかっている木の元玉切り
かかっている木について、かかった状態のままで元玉切りをし、地面等に落下させることにより、かかり木を外すこと。なお、かかっている木を元玉切りする場合、かかり木の処理の作業を行う労働者には、かかっている木が転落又は滑動する等の危険があること。