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災害事例研究 No.136 【林業】

かかり木が発生し、かかり木の下を通った際にかかり木が外れて激突

 スギ間伐作業中かかり木が発生したが、被災者は、かかり木が容易に外れないものと判断し、そのままかかり木を放置して別のスギ立木を伐倒し終えた。その後被災者はかかり木の真下を通った際、かかり木が外れて激突した。

災害の発生状況

 当日は、木材グラップル機による集材作業のほか、スギ林の間伐作業が行われており、被災者は単独で間伐作業に従事していた。
 樹高28m、胸高直径30cmのスギを伐倒したところ、前方の樹高23mのスギにかかり木となった。
 当該かかり木は、枝が密集している先端部分でかかり木となっていたが、被災者は、かかり木の元口が急傾斜地にあり、容易に外しにくいものと判断し、そのまま放置し、かかられたスギ立木の1m程横にある別の立木を伐倒した。
 その後チェーンソーとくさびを手に持ち、作業道の方向に歩き、かかり木の真下を通過した際、かかり木が外れて落下して被災者に激突した。
casestudy136

災害発生の原因

  1. 伐倒にあたり、受け口の会合線が一致せず、正確な伐倒を行っていなかったこと。
  2. かかり木の近くには作業道があり、木材グラップル機も比較的近くで稼働しており、当該木材グラップル機でかかり木を速やかに処理することが可能であったにもかかわらず、放置したまま他の作業をしたこと。
  3. かかり木が発生後、当該かかり木の状態について常に注意を払うことなく、また、立入禁止とせずに自らかかり木の下を通行したこと。
  4. 当該かかり木以外にも、かかり木となって元玉切りにより処理した形跡があり、 安全なかかり木処理作業のルールが必ずしも順守されていなかったこと。

災害の防止対策

  1. 予定した方向への伐倒となるように、適切な受け口、追い口、つるを正しく作り、かかり木とならないようにすること。
  2. かかり木が発生した場合は、極力2人以上で速やかに処理をすること。また、速やかに処理することができない場合は、テープで区画するなど、立入禁止措置を講ずること。
  3. かかり木の処理は、木材グラップル機の車両系木材伐出機械が使用できる場合は優先して活用することとし、浴びせ倒し、かかられた木の伐倒、元玉切り等の禁止事項は行わないこと。

〈労働安全衛生規則〉

(伐木作業における危険の防止)
第477条 事業者は、伐木の作業(伐木等機械による作業を除く。以下同じ。)を行うときは、立木を伐倒しようとする労働者に、それぞれの立木について、次の事項を行わせなければならない。
 一 略
 二 略
 三  伐倒しようとする立木の胸高直径が二十センチメートル以上であるときは、伐根直径の四分の一以上の深さの受け口を作り、かつ、適当な深さの追い口を作ること。この場合において、技術的に困難である場合を除き、受け口と追い口の間には、適当な幅の切り残しを確保すること。
2  立木を伐倒しようとする労働者は、前項各号に掲げる事項を行わなければならない。
(かかり木の処理の作業における危険の防止)
第478条 事業者は、伐木の作業を行う場合において、既にかかり木が生じている場合又はかかり木が生じた場合は、速やかに当該かかり木を処理しなければならない。ただし、速やかに処理することが困難なときは、速やかに当該かかり木が激突することにより労働者に危険が生ずる箇所において、当該処理の作業に従事する労働者以外の労働者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を縄張、標識の設置等の措置によって明示した後、遅滞なく、処理することをもって足りる。
2  事業者は、前項の規定に基づき労働者にかかり木の処理を行わせる場合は、かかり木が激突することによる危険を防止するため、かかり木にかかられている立木を伐倒させ、又はかかり木に激突させるためにかかり木以外の立木を伐倒させてはならない。
3  第一項の処理の作業に従事する労働者は、かかり木が激突することによる危険を防止するため、かかり木にかかられている立木を伐倒し、又はかかり木に激突させるためにかかり木以外の立木を伐倒してはならない。

〈林業・木材製造業労働災害防止規程〉

(かかり木の処理)
第54条 会員は、かかり木が生じた場合には、作業者に当該かかり木を速やかに処理させるとともに、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
(1) 当該かかり木の処理の作業について安全な作業をさせるため次のアからオまでの事項を行わせること。
ア 略
イ 略
ウ 略
エ  かかり木が生じた後、やむを得ず当該かかり木を一時的に放置する場合を除き、当該かかり木の処理の作業を終えるまでの間、当該かかり木の状況について常に注意を払うこと。
オ  やむを得ずかかり木を一時的に放置する場合、当該かかり木による危険が生ずるおそれがある場所に作業者等が近づかないよう、標識の掲示、テープを回すこと等の立入禁止の措置を講じさせること。
(2) 作業は、できるだけ2人以上の組となるように調整すること。
(3) 機械器具等は、次のアからウまでに掲げる場合に応じて使用し、安全な作業方法により処理すること。
ア 略
イ  当該かかり木の胸高直径が20センチメートル以上である場合又はかかり木が容易に外れないことが予想される場合は、けん引具等を使用し、当該かかり木を外すこと。
ウ  車両系木材伐出機械(伐木等機械、走行集材機械及び架線集材機械(機械集材装置又は簡易架線集材装置の集材機として用いている場合を除く。)をいう。以下同じ。)、機械集材装置、簡易架線集材装置等を使用できる場合には、原則として、これらを使用して、当該かかり木を外すこと。
2 略
(受け口及び追い口)
第61条 会員は、チェーンソーによる伐木の作業を行う場合には、作業者に、それぞれの立木について、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
(1) 受け口の深さは、伐根直径(根張りの部分を除いて算出するものとする。)の4分の1以上とすること。ただし、胸高直径が70センチメートル以上であるときは、3分の1以上とすること。
(2) 受け口の下切り面と斜め切り面とのなす角度は、30度以上45度以下とすること。
受け口の下切りと斜め切りの終わりの部分を一致させること。
(3) 追い口の位置は、受け口の高さの下から3分の2程度の高さとし、水平に切り込むこと。
(4) 追い口切りの切り込みの深さは、つるの幅が伐根直径の10分の1程度残るようにし、切り込み過ぎないこと。