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災害事例研究 No.139 【林業】

かかられている木を伐倒中にかかっている木が落下し激突

 かかり木の処理作業で、チェーンソーを使用してかかられているヒノキを伐倒中に、かかっているスギが外れて落下し、被災者に激突して下敷きとなった。

災害の発生状況

 間伐搬出現場において、被災者と作業者Aの2名で、伐木作業を行った後、木材グラップル機(ウインチ付き)のウインチのフックにワイヤロープを掛けて、集材を行っていた。
 被災者は、チェーンソーを使用してスギを伐倒したところ、約16m上方の斜面のヒノキにかかり木となった。被災者は、かかられているヒノキを伐倒しようとヒノキの斜面上側に受け口を切った後、次に斜面下側から追い口を切ったところ、かかっているスギが外れて落下し、被災者に激突して下敷きになった。
 近くの作業道に木材グラップル機があったが、被災者は、かかり木処理に木材グラップル機を使用しなかった。
 なお、災害発生時はかかられているヒノキは自立した状態であり、災害発生後に救出者が伐倒したもので、かかっている木はいつでも落下し得る危険な状況であった。
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災害発生の原因

  1. かかり木処理のため、かかられているヒノキをチェーンソーで伐倒したこと。
  2. 1人でかかり木を処理したこと。
  3. 近くの使用可能な木材グラップル機を使用しなかったこと。

災害の防止対策

  1. かかられた木の伐倒は、非常に危険な作業であり、絶対実施しないこと。
  2. かかり木の処理はできるだけ2人以上で実施すること。
  3. 作業計画でかかり木処理の作業方法及び順序等を定め、車両系木材伐出機械等が近くにある場合は、当該機械のウインチ等を使用し安全に処理すること。また、車両系木材伐出機械が近くにない場合は、作業現場にかかり木処理に使用する器具等を作業現場に配置し、かかり木処理をすること。
  4. かかり木をできるだけ発生させないように、チェーンソーを使用する伐倒作業において、正しい受け口及び追い口切りによって、受け口と追い口の間に「つる」を正しく残し「くさび」を使用して伐倒方向を確実にすること。
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〈労働安全衛生規則)

(伐木作業における危険の防止)
第477条 事業者は、伐木の作業(伐木等機械による作業を除く。以下同じ。)を行うときは、立木を伐倒しようとする労働者に、それぞれの立木について、次の事項を行わせなければならない。
 一から二 略
 三 伐倒しようとする立木の胸高直径が20センチメートル以上であるときは、伐根直径の四分の一以上の深さの受け口を作り、かつ、適当な深さの追い口を作ること。この場合において、技術的に困難な場合を除き、受け口と追い口の間には、適当な幅の切り残しを確保すること。
2 立木を伐倒しようとする労働者は、前項各号に掲げる事項を行わなければならない。
(かかり木の処理の作業における危険の防止)
第478条 事業者は、伐木の作業を行う場合において、既にかかり木が生じている場合又はかかり木が生じた場合は、速やかに当該かかり木を処理しなければならない。ただし、速やかに処理することが困難なときは、速やかに当該かかり木が激突することにより労働者に危険が生ずる箇所において、当該処理の作業に従事する労働者以外の労働者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を縄張、標識の設置等の措置によって明示した後、遅滞なく、処理することをもつて足りる。
2 事業者は、前項の規定に基づき労働者にかかり木の処理を行わせる場合は、かかり木が激突することによる危険を防止するため、かかり木にかかられている立木を伐倒させ、又はかかり木に激突させるためにかかり木以外の立木を伐倒させてはならない。
3 第一項の処理の作業に従事する労働者は、かかり木が激突することによる危険を防止するため、かかり木にかかられている立木を伐倒し、又はかかり木に激突させるためにかかり木以外の立木を伐倒してはならない。

〈関係ガイドライン〉

「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」(基発1207第3号平成27年12月7日、改正 基発0131第1号令和2年1月31日)の別添2「かかり木の処理の作業における安全確保に関する事項」を抜粋

〇かかり木に係る作業計画
 かかり木の処理に使用する機械器具等を含めた「かかり木の処理の作業の方法に係る作業計画」を定め、その機械器具等を作業現場に配置又は携行し、使用すること。
〇適切な機械器具等の使用
  車両系木材伐出機械、機械集材装置及び簡易架線集材装置(以下「車両系木材伐出機械等」という。)の使用の可否の別、かかっている木の径級、かかり木の状況により、次により機械器具等を使用すること。
(ア) 車両系木材伐出機械等を使用できる場合車両系木材伐出機械等を使用して、かかり木をはずすようにすること。また、車両系木材伐出機械等を使用する場合には、ガイドブロックを用い、安全な方向に引き倒すようにするとともに、急なウインチの操作、走行、ワイヤロープの巻取り等を行わないようにすること。
(イ) 上記ア以外の場合
① かかっている木の胸高直径が20センチメートル以上である場合又はかかり木が容易に外れないことが予想される場合は、けん引具等を使用して、かかり木をはずすようにすること。
② かかっている木の胸高直径が20センチメートル未満であって、かつ、かかり木が容易にはずれることが予想される場合は、木回し、フェリングレバー、ターニングストラップ、ロープ等を使用して、かかり木をはずすようにすること。
〇かかり木の処理の作業における禁止事項の遵守
(ア) 安衛則第478条第2項により禁止されている作業
   ① かかられている木の伐倒
   ②  かかり木に激突させるためにかかり木以外の立木の伐倒(浴びせ倒し)
(イ) ガイドラインで禁止されている作業
   ① かかっている木の元玉切り
   ② かかっている木の肩担ぎ
   ③ かかり木の枝切り

〈林業・木材製造業労働災害防止規程〉

(かかり木の処理)
第54条 会員は、かかり木が生じた場合には、作業者に当該かかり木を速やかに処理させるとともに、次の各号に掲げる措置を講じなければならない。
(1) 略
(2) 作業は、できるだけ2人以上の組となるように調整すること。
(3) 機械器具等は、次のアからウまでに掲げる場合に応じて使用し、安全な作業方法により処理すること。
   ア  当該かかり木の胸高直径が20センチメートル未満であって、かつ、当該かかり木が容易に外れることが予想される場合は、木回し、フェリングレバー、ターニングストラップ、ロープ等を使用して、かかり木を外すこと。
   イ  当該かかり木の胸高直径が20センチメートル以上である場合又はかかり木が容易に外れないことが予想される場合は、けん引具等を使用し、当該かかり木を外すこと。
   ウ  車両系木材伐出機械(伐木等機械、走行集材機械及び架線集材機械(機械集材装置又は簡易架線集材装置の集材機として用いている場合を除く。)をいう。以下同じ。)、機械集材装置、簡易架線集材装置等を使用できる場合には、原則として、これらを使用して、当該かかり木を外すこと。