メニュー

災害事例研究 No.147 【林業】

地拵え作業現場に向かう途中、ブル・ドーザーがバックしたところ搭乗していた被災者が轢かれて死亡

 作業者4名が1台のブル・ドーザーに搭乗し、土場から作業現場付近に到着後、ウインチ部に搭乗していた1名が後退したブル・ドーザーに轢かれ死亡した。

災害の発生状況

 土場での昼食後、4名は地拵え作業現場が予定されている現場まで、ブル・ドーザーに搭乗し、移動した。
 土場から作業現場までは約1.1キロメートル、最大斜度は23度と、急傾斜であり、道はぬかるみ、歩きにくい状況だった。運転者の他に、ブル・ドーザー後方のウインチの上に1名、残りの2名は、運転席の左右のクローラ上部の踏板上にそれぞれ搭乗して移動した。
 作業場所付近に到着し、運転者は沢側に向けて右旋回しようとしたが、集材路の端に伐根があったため回り切れず、一旦停車した後、切り返すためブル・ドーザーを後退したところ、ブル・ドーザーのウインチの上に乗っていた者が降りたことを知らずに轢いたものである。
 被災者がブル・ドーザーから降りた理由は不明であるが、次の原因が推察される。
 ① 被災者が現場に到着したと思い込み、自らブル・ドーザーから降りたもの。
 ② ブル・ドーザーが右旋回している最中に、ブル・ドーザーから振り落とされたもの。
 被災者は59歳、経験年数15年間で、ブル・ドーザーの運転者は71歳、運転歴は10年以上のベテランであった。
casestudy147

災害発生の原因

  1. ブル・ドーザーの運転席以外の箇所に被災者等を搭乗させたこと。また、事業者は、作業者がブル・ドーザーの乗車席以外の箇所に乗っていたことを、日頃から黙認していたこと。
  2. ブル・ドーザーの運転者が、ブル・ドーザーを後退させる際、後方を十分確認しなかったこと。
  3. ブル・ドーザーを使用して作業を行うに当たり、あらかじめ作業計画を定めていなかったこと。
  4. 事業者が、現場までの移動方法について、適切な方法をとっていなかったこと。

災害の防止対策

  1. ブル・ドーザー等、車両系建設機械を用いて作業を行うときは、乗車席以外の箇所に作業者を乗せないこと。
  2. ブル・ドーザーの運転者は、ブル・ドーザーを後退させる際、乗車席から後方確認が困難な場合は、誘導者を配置し、その者に誘導させること。
  3. ブル・ドーザーを用いて作業を行うときは、あらかじめ、適切な作業計画を定め、その計画に基づいて、作業を行わせること。
  4. 土場から作業場所まで距離があり、急傾斜で、道がぬかるんでいるような場合は、作業場所までの移動手段について、歩道を確保するなどの適切な方法を事前調査に基づき検討しておくこと。

〈労働安全衛生規則〉

(調査及び記録)
第154条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、当該車両系建設機械の転落、地山の崩壊等による労働者の危険を防止するため、あらかじめ、当該作業に係る場所について地形、地質の状態等を調査し、その結果を記録しておかなければならない。
(作業計画)
第155条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、あらかじめ、前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行なわなければならない。
2  前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない。
一 使用する車両系建設機械の種類及び能力
二 車両系建設機械の運行経路
三 車両系建設機械による作業の方法
3  事業者は、第一項の作業計画を定めたときは、前項第二号及び第三号の事項について関係労働者に周知させなければならない。
(接触の防止)
第158条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、運転中の車両系建設機械に接触することにより労働者に危険が生ずるおそれのある箇所に、労働者を立ち入らせてはならない。ただし、誘導者を配置し、その者に当該車両系建設機械を誘導させるときは、この限りでない。
2  前項の車両系建設機械の運転者は、同項ただし書の誘導者が行なう誘導に従わなければならない。
(とう乗の制限)
第162条 事業者は、車両系建設機械を用いて作業を行なうときは、乗車席以外の箇所に労働者を乗せてはならない。