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災害事例研究 No.152 【林業】

木材グラップル機ウインチのワイヤロープを連結させた立木を伐倒し、緊張したワイヤロープに伐倒者がはじかれた

スギの伐倒後の滑落を防ぐためとして、立木に木材グラップル機ウインチのワイヤロープを連結させて伐倒したところ、伐倒の反動で緊張したワイヤロープに伐倒者がはじかれた。

災害の発生状況

 当日、作業者4人で傾斜30度の斜面の立木の伐木、木寄せ作業を行っていた。
 被災者は、班長と2人で伐倒作業をしたが、現場が急斜面であったため、伐倒木が斜面の下方の谷に落下すると危険として、伐倒するスギ(伐根直径35cm、樹高20m)の受け口より上の部分にスリングロープを掛け、5m離れた斜面上方の作業道上の木材グラップル機のウインチのワイヤロープとスリングロープを連結し、被災者が立木を谷側へ伐倒したところ、立木を伐倒した反動でワイヤロープが緊張し、被災者がワイヤロープにはじかれた。
 被災者は、年齢30歳、経験年数は2年弱であった。

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災害発生の原因

  1. 急斜面で木材グラップル機のウインチと連結させたスギ立木を谷側へ伐倒したこと。

    伐倒の反動でワイヤロープが緊張し、そのワイヤロープに伐倒作業者がはじかれる危険性がある。特に連結している長いワイヤロープは、周囲に灌木など障害物の影響から、ワイヤロープが跳ねる方向は予測できず、伐倒作業者も退避する場所も限定されることから極めて危険な作業である。

  2. 伐倒作業者が退避をせずに、ワイヤロープのはじくところにいたこと。

災害の防止対策

  1. 急斜面に限らず、木材グラップル機等のウインチのワイヤロープと伐倒する立木を連結したまま伐倒しないこと。
  2. 伐倒者は、伐倒する前に、事前に伐倒方向の反対側の斜面上方で3m以上離れた立木の陰を選定しておくこと。また、退避路は、退避の際、つまずかないように整備しておくこと。
  3. 作業現場に応じた作業方法等について作業地の調査記録を行い、その結果についてリスクアセスメントを行うとともに、作業計画を作成すること。また、作業方法が変わった場合は、その都度リスクアセスメントを実施し、低減対策を踏まえ作業手順書を作成すること。
  4. 作業指揮者は、作業計画や作業手順書に基づく作業を指揮すること。

その他

 本件の災害は、急斜面の立木を伐倒すると下方の谷まで伐倒木が滑落するおそれがあり、その後の集材作業にも困難が生じるとして、安易に行われたものと思われる。
 本件に類似した災害事例には、移動式クレーンを林道に停め、ワイヤロープで移動式クレーンと伐倒する立木を連結して伐倒したところ、倒れた勢いで移動式クレーンは引っ張られて、移動式クレーンを運転していた被災者が移動式クレーンとガードレールとの間で挟まれ被災したものなどがある。
 本件の災害と同じように、伐倒する立木と車両系木材伐出機械等を連結させ、伐倒する作業は極めて危険性が高く、ワイヤロープに伐倒作業者が跳ねられる危険性の他、伐倒した衝撃で車両系木材伐出機械等の転倒や転落、ワイヤロープの切断等の危険性もある。
 また、急傾斜地の伐倒作業は、十分な退避に要する時間も長くなり、伐倒者にとってはリスクの高い作業であるとともに、伐倒方向が変わった場合は、ワイヤロープがはじく方向も変わる場合もある。
 危険な作業方法を安易に選択しないよう、リスクアセスメントの実施を徹底するとともに、決められた作業手順や方法については、必ず遵守させる必要がある。

〈チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン(令和2年1月31日付け基発第0131号)〉

6 作業計画
(1)調査及び記録、(2)リスクアセスメント及びその結果に基づく措置の実施等、(3)作業計画、(4)作業指揮者