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災害事例研究 No.23 【林業】

傾き木をワイヤロープで規制して伐倒したところ、ワイヤロープを牽引していた被災者が激突された

 林道上に傾いていた台風被害による「傾き木」を反対側の山側斜面に伐倒するため、被災者が伐倒木にワイヤロープを巻き付け人力で強く引っ張るとともに、同僚がチェーンソーで受け口を切り「傾き木」を「起こし木」状態にしながら追い口を切っていたところ、突然「傾き木」が被災者の方向へ倒れ始めたため、慌てて退避したが間に合わず激突したものである。

災害発生の状況

  1. 当日、被災者は同僚と2人で45年生のヒノキ林で間伐作業に従事していた。 林道際で台風被害木が林道を覆うように弓形に傾いていた「傾き木」(胸高直径30cm、樹高8m)を2人で間伐することにしたが、当該ヒノキはそのまま伐倒すると林道を塞いでしまうので傾き方向とは反対側の山側に伐倒することになった。
  2. 被災者が「傾き木」のヒノキに梯子を掛けて登り、4メートル程の高さのところにワイヤロープを巻き付け、約8メートル離れた山側斜面から人力で強く引っ張りながら、同僚が山側に受け口を入れた。その後、同僚は被災者がワイヤロープで引っ張る「傾き木」の重心の移動を慎重に見極めながら慎重に追い口を切り始めた。
  3. 「傾き木」から「起こし木」状態になったとき、当該「傾き木」が山側に倒れだしたので、ワイヤロープを引いていた被災者は慌てて待避したが梢端部に激突された。

災害発生の原因

  1. 「傾き木」をガイドブロックなどで牽引方向を変えることなく、直接人力で牽引したため、「傾き木」は被災者の引いていた方向に倒れてしまったこと。
  2. チルホールなどの牽引具を使用せず、人力でもって「傾き木」をワイヤロープにより牽引したことにより、「起こし木」の状態での微妙なワイヤロープ張力の調整ができなかったため、「ツル」が機能しない切り込みとなり、伐倒方向を規制できなかったこと。また、「ツル」が機能しなかったため、安全な場所へ退避する時間的な余裕がなかったこと。
  3. 「傾き木」の伐倒作業について、チェーンソー作業者とワイヤロープ牽引者との合図確認・連絡調整が十分でなかったこと。

災害防止対策

  1. 「傾き木」を重心と反対方向に伐倒規制するときは、チルホール等の牽引具を用いるとともにガイドブロックで牽引方向を変える等、安全で確実な作業方法とすること。
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  2. 「傾き木」の伐倒規制に当たっては、次の事項に留意すること。
    ①伐倒する木の高さの2分の1以上のところの起こしやすい位置にワイヤロープを巻き付け、チェーンソー作業者と牽引者との連携を図り、引っ張り過ぎないようにすること。
    ②受け口は通常より大きくとり、追い口の高さは低目にし、クサビを用いること。