災害事例研究 No.180 【林業】
チェーンソーで造材中の転倒木が転落し、それに巻き込まれ斜面を滑落した
被災者は、急な斜面にある転倒木をその斜面下側でチェーンソーにより造材しようとしたところ、転倒木が転落し、それに巻き込まれ、斜面を滑落した。
災害の発生状況
林道開設工事支障木である広葉樹を中心とした立木の先行伐採作業を請け負った事業場に雇用されていた被災者(経験年数2年)は、同僚2人とともに、チェーンソーによる伐木造材作業(被災者及び同僚A)及び搬出作業(フォワーダ、同僚B)を行っていた。
当日、被災者は、林道開設予定路線の急な斜面にある立木を斜面下(沢)から斜面上へ向かって伐木造材作業を行っていた。沢から約13mの高さの位置に転倒木(長さ約5mの枯損木)が根むくれの状態で横たわっていた。
被災者は、当該転倒木の斜面下側で、チェーンソーを使って造材を始めたところ、突然当該転倒木が動き始めたため、退避しようとしたが、転落してきた当該転倒木や土砂等に巻き込まれて、斜面を滑落した。
本作業に係るリスクアセスメントの実施や作業計画の作成も行われていなかった。
災害の発生原因
- 作業経験年数が短い被災者に転倒木の造材をさせたこと。
- 転倒木を杭止めしなかったこと及び斜面下側で造材したこと。
- チェーンソーを用いた伐木等作業に関する作業計画を作成していなかったこと。
災害の防止対策
- 伐木等に係る特別教育を修了した者のうちから、技能を考慮して指名した者を転倒木の造材の業務を行わせること。
- 斜面で造材を行う場合は、当該転倒木の斜面上方で作業を行うこと。
- 斜面での作業を行う場合は、杭止め等の転落防止の対策を行うこと。
- 作業を始める前に、作業現場の事前調査を行うとともに作業手順の検討を行い、リスクアセスメントを実施し、その結果に基づいて作業計画を作成するとともに、作業指揮者を選任し、当該作業計画に基づく作業指揮を行わせること。
〈労働安全衛生規則〉
(造材作業における危険の防止)
第480条 事業者は、造材の作業(伐木等機械による作業を除く。以下同じ。)を行うときは、転落し、又は滑ることにより、当該作業に従事する労働者に危険を及ぼすおそれのある伐倒木、玉切材、枯損木等の木材について、当該作業に従事する労働者に、くい止め、歯止め等これらの木材が転落し、又は滑ることによる危険を防止するための措置を講じさせなければならない。
2 (略)
(立入禁止)
第481条 事業者は、造林、伐木、かかり木の処理、造材又は木寄せの作業(車両系木材伐出機械による作業を除く。以下この章において「造林等の作業」という。)を行っている場所の下方で、伐倒木、玉切材、枯損木等の木材が転落し、又は滑ることによる危険を生ずるおそれのあるところには、労働者を立ち入らせてはならない。
2〜3 (略)
〈チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン(抜粋)〉
6 作業計画等
(1)調査及び記録
事業者は、伐木等作業を行う場合、伐木等作業を行う範囲を対象に、チェーンソーを用いて伐木の作業を行う場合には表1、チェーンソーを用いて造材の作業を行う場合には表2に示す事項を含め調査し、その結果を記録すること。(表2略)
(2 )リスクアセスメント及びその結果に基づく措置の実施等
伐木等作業については、労働安全衛生法(昭和47年法律第57 号)「以下「法」という。」第28条の2第1項に基づき、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(平成18年3月10日危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第1号)を踏まえ、リスクアセスメントを行い、その結果に基づいて、労働安全衛生法令に規定された措置を実施するほか、労働者の危険又は健康障害を防止するために必要な措置を講ずるよう努めること。
(3)作業計画
ア 事業者は、伐木等作業を行う場合には、あらかじめ、上記(1)を踏まえ、チェーンソーを用いて伐木の作業を行う場合には表3、チェーンソーを用いて造材の作業を行う場合には表4に示す事項を含む作業計画を定めること。(表3及び表4略)(以下、略)
イ 事業者は、上記アにより定めた作業計画に基づき伐木等作業を行うこと。
ウ 上記アにより定めた作業計画について、事業者は労働者に確実に周知を行うこと。なお、例えば、伐木等作業を開始する前に、朝礼等の安全衛生に関する打合せを活用し、作業計画の説明を行う等の方法があること。
(4)作業指揮者
事業者は、伐木等作業を行う場合、上記(3)により定められた作業計画に基づく作業の指揮を行わせるために、作業指揮者を選任すること。