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災害事例研究 No.5 【林業】

かかり木の投げ倒しで二重にかかってしまった間伐木の処理中に反発した材の下敷きとなった

 間伐作業で発生したかかり木を外そうとして、隣接木を投げ倒した(浴びせ倒し)ところ、これもかかり木となった。
 これを処理しようとして投げ倒し木のつるを切断中、かかり木によってたわめられていた反発力によって、残ったつるが切れ、落下した処理木の下敷きになった。

災害発生の状況

 林齢65年、林地傾斜約15度のヒノキ人工林の間伐の伐倒作業を3人で分かれて実行中、被災者の担当方向から音がしなくなった。これを不審に思った同僚が、伐倒木の下敷きとなった被災者を発見した。
 以下の記述は、被災現場の状況を調査した結果に基づく推定である。

 被災現場では、残置木(胸高直径38cm、樹高26m)の地上約18m付近に出た枝に、斜め上方7mに位置する伐根の直近に元口を着地した伐倒木(胸高直径28cm、樹高22m)が片枝状となった枝を上に向けてかかり木となっていた。これら枝のうち根元に近いものは折れたり、引きちぎられたりしていた。
 投げ倒し木(胸高直径40cm、樹高24m)は、残置木とほぼ水平に約12m離れた位置に伐根があり、残置木の反対方向のやや下方に元口を落とし、斜め上向きに倒伏していた。この伐根には、残置木の方向に深さ14cmの受け口、高さ10cm、長さ41cm、幅4cmのつるが形成されており、谷側から25cmにわたってチェーンソーで切断した形跡があった。
 これらの状況を勘案すると、

  1. 先に発生したかかり木を投げ倒しによって外そうと試みたものの、二重のかかり木となった。
  2. これを処理するため、2本目のかかり木(投げ倒し木)の伐根に残ったつるを切断中に、2本のかかり木によって、たわめられていた残置木の力が、弱くなった残部のつるをちぎった。そのことによってゆるんだ残置木が復元反発し、同時に、切断中のかかり木が伐根から離れ、さらに1本目のかかり木の傾斜等の影響で予期しない方向にはねて、退避不十分な被災者に覆いかぶさったものと推測される。
    casestudy005-2201

災害発生の原因

  1. かかり木の処理方法として厳禁されている投げ倒しによって処理しようとしたこと。
  2. 二重のかかり木状態の処理に当たって、切断しようとしたつるの力を過大に評価したこと。
  3. 先のかかり木の傾斜角等の形状や処理木との位置関係等による元口の挙動の判断を誤ったこと。(退避の方向、タイミング等の誤判断につながった)
  4. 安全かつ効率的なかかり木処理のための用具類を現地に持って行かなかったこと。けん引具は林道に駐車した通勤車両に積んだままであった。

災害防止対策

  1. 伐倒作業の過程でやむなく発生したかかり木は、同僚と協力する等によってその都度、速やかに処理すること。
  2. かかり木の処理方法として禁止されている方法は、決して試みないこと。
  3. 伐倒対象木の形状、立木密度等に応じた最適なかかり木処理用具類を選択して、確実に現場に用意すること。
  4. 教育、研修等の場において、使用実績のないかかり木処理用具類についても試用する等実践に結びつける工夫をすること。