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災害事例研究 No.53 【林業】

作業路開設作業中、法面が崩壊しドラグショベルが土砂に押しつぶされた

 伐倒した原木を搬出するためのドラグショベルで作業路開設作業を行っていたところ、進行方向左側の地山が崩壊(高さ約3m、幅約5m)し、崩壊した土砂にドラグショベルの運転席部分が押しつぶされ、被災者は胸部圧迫による窒息で死亡した。

災害発生の状況

    1. この事業は立木の伐採及び原木の搬出路を開設するものであり、伐出量は4,074m3、搬出路の延長は250mを計画。伐倒作業者5人、作業路開設のための重機オペレーター1人の計6人で作業を進めていた。
    2. 当日朝、6人は会社所有の車で現場に向かったが、伐採個所と作業路開設個所は離れており、伐採個所が奥側にあることから、重機オペレーターである被災者は重機のある場所で降り、他の5人は伐採個所に向かった。6人の中で車両系建設機械の運転資格を所持している者は被災者1人であり、当日もいつものとおり1人で重機運転による作業路開設作業を行っていた。
    3. 立木伐採作業を終えた5人は帰るため車に乗り、待ち合わせ場所である作業路開設現場入口で待っていたが、被災者がなかなか来ないため同僚の1人が様子を見に行ったところ、ドラグショベルのキャビン部分が土砂や立木に押しつぶされ、土砂から頭だけを出している被災者を発見した。要請により急行した救急隊、同僚等とともに救出したが、被災者はすでに崩壊土砂等による胸部圧迫により死亡していた。
    4. なお、被災者は単独で作業路開設作業を行っていたことから、災害発生の詳細は不明であるが、ドラグショベルの進行方向左側の掘削個所の土砂とその崩壊部分に立っていたと思われるナラ(胸高直径22cm、樹高16m)が崩壊落下し、ドラグショベルのキャビン部分を押しつぶしたものと思われる。
    5. 被災者が作業路開設作業を行っていた個所の法面の勾配は3分(約73度)であり、高さ9.6m の個所から幅5m、高さ3mにわたって土砂が崩壊しているが、この部分に湧水は見られないものの縦に地層が入っており、崩壊した個所の下方部分は縦に亀裂が入った岩盤が剥がれ落ちるような状況が見られた。
    6. この個所の土砂の堅密度を確認したところ、手で押しただけで簡単に砕けることから、被災現場の土質は崩壊しやすい状態であったと推定される。

災害発生の原因

      1. 地山の掘削面の高さが2m以上であるにもかかわらず、「地山の掘削作業主任者」を選任しないまま作業を行わせたこと。
      2. 作業路開設のため、車両系建設機械を用いて地山法面の掘削作業を行わせるに際して、地山の崩壊による災害を防止するための地形、地質などの調査を行っていないこと。
      3. 地山の崩壊、土砂の落下の恐れがあるにもかかわらず、土止め支保工(矢板)の設置等崩壊防止の措置を講じていないこと。
      4. 掘削個所の土質や立木の状態などを考慮しないまま一律に3分(約73度)勾配で掘削したこと。
        casestudy053

災害防止対策

    1. 高さが2m以上の地山の掘削作業を行わせる場合は、「地山の掘削作業主任者」を選任し、作業主任者の作業指揮により作業を行わせること。
    2. 車両系建設機械を用いて作業を行わせる場合は、あらかじめ、当該作業に係る場所について、地形、地質の状態等を調査し、その調査結果を踏まえ作業計画を立て、当該計画に基づき作業を行わせること。
    3. 地山の崩壊、土石の落下による災害発生の恐れがある場合は、土止め支保工(矢板)等を設けてから作業を行わせること。
    4. 掘削面の勾配は、掘削面の土質及び掘削個所の立木の状態等を考慮して安全勾配を決定すること。