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災害事例研究 No.79 【林業】

木材グラップル機のウインチで伐倒木を引っ張った際、つる絡みの隣接木が同時に倒れたため伐倒方向が変わり、運転席の被災者を直撃

 被災者はスギの皆伐作業に同僚2名と従事しており、木材グラップル機のウインチを使用して伐倒木の方向を規制していた。被災者が伐倒木をウインチで引っ張ったところ、つる絡みの隣接木が倒れかかったため伐倒方向が変わり、伐倒木が木材グラップル機運転席の被災者を直撃した。

災害発生の状況

 被災者は森林の皆伐作業に、当日午前8時頃から同僚を含む3人で従事していた。
 作業道沿いの林縁木「スギA」(直径約40cm、樹高約26m)を伐倒するため、同僚が受け口と追い口を入れ、被災者が木材グラップル機のウインチを操作していた。ワイヤーを同僚が伐倒木に巻き付け、被災者がウインチを巻いて山側に倒そうとしたところ、つるで引っ掛かっていた隣接木の「スギB」が根元から倒伏し、「スギA」に倒れかかった。そのため「スギA」が予定した方向と違う方向に急に倒れ込み、木材グラップル機を運転していた被災者の頭部を「スギA」の先端部分が直撃した。(側面図・平面図、写真参照)
 被災後直ちに同僚が通報し、ドクターヘリで病院に搬送されたが頭を強く打っており、死亡した。
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災害発生の原因と対策

基本原因 問題点 対策
安全措置が十分でない
  • 作業を進めるに当たり、合図や確認(つるの状態や見通の悪い作業場所での伐倒木の状況)が十分に行われていなかった。
  • A-基本ルール徹底のための安全教育の実施。
  • B-事業主パトロール等による作業状況確認の実施。
  • C-伐倒規制に当たっては、伐倒木とけん引具(ウインチ等)の間に必ずガイドブロックを入れること。
保護具未着用
  • ヘルメットを着用していなかった。
危険な状態を作る
  • 短いワイヤーで、伐倒木にほぼ正対してけん引した。
防護措置の不適
  • 防護措置(防護柵等)がなかった。
  • B-事業主パトロール等による作業状況確認実施。
  • C-防護柵等の防護措置の実施。
作業方法の不適
  • 今回の伐倒では、方向規制に不適当な車両系林業機械(防護措置がなくワイヤーが短い)が使用された。
管理 教育の未実施
  • 車両系林業機械の安全作業に対する教育が十分でなかった。
  • A-基本ルール徹底のための安全教育の実施。
  • B-事業主パトロール等による作業状況確認実施。
  • C-防護柵等の防護措置の実施。
  • D-作業計画の作成。
安全管理の不十分
  • 作業計画が不十分で、事前の安全対策(作業の内容に合わせた機械の選定や防護措置)が十分に取られていなかった。
  • 作業安全指示(正対でのけん引禁止等)に対する確認(現地での作業状況)が不足していた。

まとめ

 車両系木材伐出機械による労働災害は増加傾向にある。原因は、機械台数の増加とともに、事業主及び作業員の車両系木材伐出機械に対する知識や安全作業意識が十分に身についていないことが影響しているものと思われる。
 平成26年6月及び12月に、労働安全衛生規則が改正され、車両系木材伐出機械に対する規制の強化が行われたが、これらの内容の現場の第一線への浸透がいまだ十分にできていない感が否めない。
 今回のような災害を未然に防止するには、現場の潜在的危険性を事前に把握した上で、リスクを排除・低減することが急務と思われる。そのためには、車両系木材伐出機械の防護措置や作業の安全措置が労働安全衛生規則の内容を満足するとともに、車両系木材伐出機械の作業計画書を事前に作成することが重要となる。