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災害事例研究 No.97 【林業】

裂けた材にはじき飛ばされ、その材の下敷きで死亡

 偏心木を伐倒したところ、樹幹が縦に裂け、その裂けた材により被災者ははじき飛ばされ伐倒木の下敷きとなって死亡した。

災害の発生状況

 沢側に重心が傾いている偏心木のスギ立木(胸高直径40cm、樹高22m)をチェーンソーで伐倒するため、受け口を作り、追い口を切り込んでいたとき、突然幹が縦に裂け、被災者がはじき飛ばされ、倒れた被災者の上に伐倒木が倒れて下敷きになった。
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災害の発生原因

  1. 沢側に傾いている偏心木を、伐倒前に立木をよく観察せずに、普通の伐倒方法により伐倒したこと。
  2. 追い口切りの位置が低かったこと。
  3. 偏心木を木の重心の方向に伐倒したこと。
  4. 指示を受ける作業にもかかわらず、独断で伐倒を行ったこと。

災害の防止対策

 偏心木は、応力がかかっており、かつ裂けやすい樹種の場合は、特に安全確実な方法、手順で伐採しなければならない。そのための対策として、

  1. 下方向に重心が傾いた偏心木を下方向に伐倒すると、倒れる速度も速くなり、加えて樹幹の裂けを誘発することになり大変危険である。こうした偏心木の伐倒方向は、なるべく重心の方向を避け、30°程度左右いずれかの方向とすること。
  2. 受け口切りは、予定した方向に確実に倒すため、受け口は深めにつくること。
  3. 追い口切りの高さは、通常の位置より高くすること。また、偏心の程度が著しい木、裂けやすい木は、追いづる切りによる方法が安全で確実な伐倒方法であること。
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  4. 偏心木を重心の方向へ倒すときは、必要に応じ裂け止めをすること。
    ワイヤロープ、麻ロープ等を追い口上部に4~5回強く巻き付けるなど、樹幹が裂けることを防ぐ事前の措置をとること。
    裂けやすい樹種は、シオジ、セン、ケヤキ、クリ、キハダ、ミズメ、ウダイカンバ、ヤチダモ、ハンノキ、カラスザンショウ、ネムノキなどがある。
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  5. 重心が伐倒方向に対して著しく偏在している木の伐倒は、安衛則第36 条第8号に係る特別教育修了者のうちから技能を選考の上、事業者が指名した者の指示を受けて伐倒作業を行う。

 近年、伐倒木及びその周辺の事前確認を怠ったため、類似災害が多く発生しており、伐倒作業を実施する準備の段階で、伐倒木とその周囲をよく観察し、伐採方法、伐採手順等を慎重に考慮する必要がある。
 また、伐倒前の事前確認は、繰り返しリスクアセスメント等を実践し、作業者の安全意識を高めていく必要がある。

<参考>

林業・木材製造業労働災害防止規程

(指示を要する伐木)
第28条(10月26日適用の新災防規程では第53条に該当)
 会員は、次の各号に掲げる業務に就かせる場合には、安衛則第36条第8号に係る特別教育修了者のうちから技能を選考のうえ、会員が指名した者に、伐倒による危害を防止するための必要な事項を指示させなければならない。
 ⑴ 控索を使用して行う伐木の業務
 ⑵ 安全帯を使用して行う伐木の業務
 ⑶ 伐倒の際に危害を及ぼすおそれのあるあばれ木又は空洞木の伐木の業務
 ⑷ 重心が伐倒方向に対して著しく偏在している木の伐木の業務
 ⑸ かかり木となるおそれのある木の伐木の業務
 ⑹ かかり木の処理の業務