令和3年安全衛生部長年頭所感

年頭所感

厚生労働省労働基準局 安全衛生部長 田中 佐智子

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 新年を迎え、心からお慶び申し上げます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。令和3年の年頭に当たり、改めて日頃の労働安全衛生行政への御理解と御協力に感謝申し上げます。

 我が国の人口は、減少に転じておりますが、出生率の低下を背景に、いわゆる団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年頃に向けて、15歳から64歳層の人口の減少が加速すると見込まれています。こうした人口構造の変化の中で、働く人一人ひとりが心身ともに健康を保ちながら、意欲や能力を一層発揮できる環境づくりが重要な課題となっており、労働災害の防止に向けた取組も一層強く求められております。
 近年の労働災害による死亡者数は、長期的に減少しているものの、労働災害による休業4日以上の死傷者数は、高年齢労働者の増加やサービス産業化の進展などの就業構造の変化等により、増加傾向にあります。これらを踏まえ、労働災害防止対策に全力で取り組んでまいります。

 また、昨年来、職場における新型コロナウイルス感染症の感染防止対策が重要となっております。職場における新型コロナウイルス感染症の拡大防止を図りつつ、業務を継続していただくため、「職場における新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するためのチェックリスト」の活用等により、職場における感染予防、健康管理の状況を確認した上で、職場の実態に即した感染拡大防止対策を検討することなど、労使が一体となって感染拡大防止対策に取り組んでいただくよう、協力を依頼してきたところです。
 引き続き、職場における感染防止対策に全力で取り組んでまいります。

 働く人の安全確保対策について申し上げます。
 第13次労働災害防止計画(計画期間:平成30年度~令和4年度)の重点業種への対策のほか高年齢労働者の増加を踏まえ、高年齢者が安心して安全に働ける職場環境の実現を目的として作成した、事業者と労働者が講ずべき措置を盛り込んだガイドラインの周知や、高年齢者の労働災害防止に取り組む中小企業に対する支援を進めてまいります。
 また、外国人労働者の受入れが進み、外国人の労働災害が増加傾向にある中で、日本語に不慣れな外国人労働者に対する安全衛生教育の重要性が増していることから、雇入れ時などに活用できる視聴覚教材の普及等に努めてまいります。

 次に、働く人の健康確保対策について申し上げます。
 職場におけるメンタルヘルス対策を推進するため、ストレスチェックの実施の徹底、集団分析の結果を活用した職場環境改善の取組の促進、ストレスチェックの実施率が低調な労働者数50人未満の事業場に対する支援を図ってまいります。
 また、「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」の周知や両立支援コーディネーターの育成・配置等を進めることにより、企業・医療機関の患者に対する支援ノウハウの強化を図るとともに、地域両立支援推進チームの取組等を通じて、がんや難病等と仕事との両立に向けた地域における相談支援体制の構築等を進めてまいります。

 さらに、化学物質をめぐる対策として、石綿使用建築物の解体工事の増加が見込まれる中で、石綿含有の事前調査や労働基準監督署への届出が適切になされないなど、石綿等が使用されている建築物等の解体・改修工事に必要な措置を適切に実施していない事例が散見されたことから、事前調査を行う者の要件を定めるほか、事前調査結果等の電子届出制度の創設、写真等による作業記録の保存義務化などを内容とする石綿障害予防規則の改正を昨年行いました。本年は、改正規則の周知・指導等を図るとともに、同様の内容により大気汚染防止法を改正した環境省とも連携して、解体・改修工事における石綿ばく露防止を図ってまいります。
 また、化学物質管理をめぐる国際的な動向、災害発生状況等を踏まえ、化学物質対策の在り方の見直しに向けた検討を進めてまいります。

 こうした施策を中心に、労働災害防止団体や労使団体をはじめ関係団体の方々と連携し、働く人の日々の仕事が安全で健康的なものとなり、働く人にとって、より良い将来の展望を持ち得るような社会づくりを進めてまいる所存です。今後とも、労働安全衛生行政への一層の御理解と御協力を賜りますよう、お願い申し上げまして、新年の挨拶とさせていただきます。